馬場信幸写真工房

この写真はTTArtisan10mmF2で撮影したものです。詳細はこちらです。

CAPA2024年1月号のコラムで小さく掲載したアザミの綿毛で、ソニーPZ16〜50mmF3.5~5.6に、APS−C用の16mmF2.8用のワイドコンバーターを組み合わせての撮影です。絞りはF6.3で、ワイドコンバーターによって発生するマイナスの球面収差によって程よい滲みが加わり後ボケも柔らかくなります。詳しくはこちらです。

この写真は、CAPA2022年5月号のコラムで紹介した、30年ほど前の標準ズーム、ミノルタAF24〜85mmF3.5-4.5を分解し、その第1群を利用して手作りしたレンズで撮影したものです。焦点距離は84mmで、F5.6相当の回転絞りによって背景の点光源のボケは理想的な柔らかさになります。フォーカスを合わせたところは球面収差によるハロによってコントラストが低下しますが、輝度の高いところでは光が滲み、また後方微〜小ボケが柔らかく滲んで味があります。この手作りレンズの詳細は近く掲載します。

写真レンズにおいて必要以上のシャープさよりも大切なのが「心地よいボケ描写」なのですが……

高い解像力と柔らかい理想的なボケを両立させたソニーSTF100ミリF2.8。口径食もなく、全画面で前ボケ、後ボケ共に均等な柔らかさを実現した世界で唯一のレンズです。
高い解像力と柔らかい理想的なボケを両立させたソニーSTF100ミリF2.8。口径食もなく、全画面で前ボケ、後ボケ共に均等な柔らかさを実現した世界で唯一のレンズです。

 写真レンズの歴史はシャープさの追求でした。それがコンピューターによるレンズ設計の飛躍的な進化と生産技術の向上、そして近年のデジタル一眼の高画素化への対応により、現在では大口径レンズでも開放から驚きの高解像力です。この高性能がアピールされたことで、デジタル一眼の画素数は多いほどいい、レンズの解像力は高いほどいい、との見方が広まってしまいました。

 写真がフィルムの時代は、フィルムから引伸ばしたプリントを人間が鑑賞する上で必要なレンズの解像力は科学的に定義されており、さらにフィルムという枠がありました。ところがデジタル一眼の高画素化が、この枠を大きく超えてしまいました。

 趣味で写真を楽しむために必要な画素数とレンズの解像力。これを正しく理解すると、高画素、高解像力に心を奪われることもなくなり、撮影も、心身も、そして金銭的にも軽くなります。

 写真レンズにおいて、過ぎた高解像力よりも大切な性能ともいえるのが心地よいボケ描写です。ところが写真レンズのボケは、シャープな結像にするために収差を補正した結果として現れるために、高い解像力と柔らかいボケ描写の両立は容易ではありません。事実、最近のレンズはデジタル一眼の超高画素に開放から対応できる解像力にするために、ボケ描写が犠牲になっています。

 今や「美しいボケ味」が宣伝の常套句になっていますが、写真レンズのボケ描写の良し悪しは、小さな点光源の後ボケが全画面でどうなっているかを見ればわかります。特にフォーカスを合わせた被写体の後方微〜小ボケ領域に良し悪しが顕著に現れ、さらに画面の周辺ほど崩れて悪くなります。このようなこともあり、画面の周辺で小さな点光源による後ボケ、特に小ボケを正直に見せている作例写真はお目にかかれません。

 また微〜小ボケにおいては目障りな二線ボケも、それが大きくぼけていくと二線ボケは徐々に薄らいでいき素直なボケになり、ボケの質はボケの大きさでも変わります。加えて開放では画面の中央では円くぼけていても周辺に行くほど欠けていく口径食の問題もあります。

 このようにレンズのボケ描写は複雑で奥の深い世界ということもあり、各種の媒体やネット上におけるレンズのボケ描写に対する評価には間違いも多くあります。そこでこのサイトでは、レンズのボケ描写を正しく認識していただくために客観的に評価する方法も含め、少しずつですが、ボケ描写について詳しく解説していきます。